ワラスを見下ろしながらポルタドーレと羊飼いが話し込んでいる。
6時にギャラクシアでピックアップされた。ロドリーゴとポルタドーレのサカリアスと町外れまでタクシーで向かう。高度順化にロドリーゴは参加せず、サカリアスと3人で歩き出す。
まだ薄暗いのでワラスの町の明かりが眼下に広がっている。車の通る道を避けて村の家々を結ぶ細い道を行く。道と畑は低い石垣で仕切られている。刈り入れが終わったトウモロコシ畑にやせこけたロバや牛か所在無さげに立っている。黄金色の麦畑もある。民族衣装のお母さんが畑仕事をしている。厳しい生活かもしれないがのどかな一面もある。乾季なのに道に沿って水が豊かに流れていて、カーラーなどが咲いている。日干し煉瓦の家が景色に溶け込んでいる。村には犬が多く外来者を威嚇して怖い。ポルタドーレが居なかったら飛び掛ってきそうな勢い。縄張りがあるらしく、自分の家から外れると吼えるのをやめる。村の奥に入ってきたと思えば時々コレクティーボが走る広い道を横切る。道の行き止まりに制服が一人、ゲートが閉まっていてハイキング道は閉鎖されている。月曜は通れないのだそうだ。ここでハイキングを終了してビールを飲みに下るのかと思ったが、別の道があった。
川沿いの道をしばらく登ると、やがて小高い丘の急登に差し掛かる。ここが高地であることを思い知る。丘の上は広い草原になっている。草原の向こうにはこれから向かう尾根と、その奥に雪山の頂が望める。朝方は霜が白かったが日をさえぎるものがない草原では日差しが強く熱い。長い草原を抜けると傾斜が増してきて道も狭くなり山道となる。ここからがいよいよつらい登り、すでに標高は富士山を越えた。
こんな所でも羊飼いが居て、怖そうな犬がこちらを警戒する。ポルタドーレとなにか話し込んだ後、こちらに話しかけてくる。言葉がわからないまま握手をして分かれる。ジグザグに登る石の道から岩盤のような石畳の道に変わると水平になり、大きな湖が現れる。その昔は氷河湖だったと思われ、広い岩ダタミのくぼみに水が溜まっているような、カルデラ湖のような景色。対岸の岩と青い空が湖面に映って美しい。
しばらく景色を堪能し、来た道を戻り少し高度を下げた見晴らしの良い岩畳で昼食をとった。
帰りのコレクティーボは少し待った。行商の民族衣装のおばさんや、目的不明のおじさん、町に出るめかしこんだお嬢さんなども道々次々に乗り込んでぎゅうぎゅう詰めででこぼこ道を下ってゆく。
ところで、目的地はチュルプと聞いていたのでずっとそう思っていたが、帰宅後ルートを調べるとまったく違っていて、その東のLag.Ahuac(4580m)であった。登山口のゲートとその横、帰りにコレクティーボに乗った墓地が目印になった。
ずっと見晴らしがよいルートなので結構登られているようだがこの日は私たちだけだった。高度順化のためだが、インディオの村の中を通るなど、外来者だけでは入れないエリアを見ることが出来て有意義な一日だった。